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なまくら消閑堂 リレー小説その2

なまくら消閑堂

オタクな社会人のブログ

リレー小説その2

第1話はこちらから



セミの声が所構わず鳴り響き、暑さを更に色濃くさせる夏真っ盛りの昼。
限られた貴重な夏休みの1日に、こうして制服に袖を通して俺たち古典部員は部室で顔を並べていた。
わざわざこんな暑い日に無駄な労力を使って自分の家から出ることは俺の省エネのポリシーに反する。
夏休みに登校して部活動など、熱心な部活の部員にまかせておけばいいのだ・・・
などといった至極まともな大宇宙の真理も、現在栄えある我が古典部には適応されないようだった。
というのも、文集作成というとてつもなく面倒な作業が俺たちの前に立ちはだかっているのである。

「氷菓事件」に決着をつけた日から数日経ったある日。
自室のベットでごろ寝をしつつ平穏な時間の流れを噛み締めるという「有意義な」夏休みを堪能していた俺に、
悪魔の呼び声がかかる。敬愛すべき我らが部長様からの電話だった。

「折木さん!先日はありがとうございました!それでですね!明日の予定はあいてますか?部室に来て欲しいんです!」

その声を聴いた途端、俺は省エネに特化した日常が音を立てて崩れていくのを知覚した。
おのれ千反田。お前は慈愛に満ちた笑顔を見せる破壊神か。

千反田からの電話の内容はこうだ。
本格的に文集製作の作業に入りたい。伊原とも既に話したのだが、休み明けにとりかかると文化祭には確実に間に合わないとのこと。今から取り掛かれば余裕ではないが十分間に合いそうだということなので、早速実行に移したい・・・

そうか、頑張れ。応援してるぞと言い捨てて受話器を置こうという衝動に駆られるも、そういうわけにもいかない。
氷菓事件より以前に、部活として文集を作る必要性は千反田から聞いていたし、なによりその時に作ると言ってしまっていたからな。

かくして、己の行動理念に自ら背くという大罪を犯しつつ、俺は夏休み中の学校へと足を運んだ。
夏休みといえど、部活動を行なっているところも少なくなく、学校には結構な数の生徒の姿が見られる。
午前中に文集製作の指針を決め、各担当の割り振りまで済ませたところで昼にさしかかり、各自持ち込んだ昼食に手を付け始めていた時のことである。
ちなみに里志は別件の用事があると言って、どこかへ行ってしまった。

俺が部室の窓際の席に座り、持ってきた文庫本に目を落としつつコンビニで買ってきたおにぎりを味わっていると、お互いに机を向きあわせて昼食を摂っていた伊原と千反田との会話が自然と耳に入ってきたのである。

「そ、夏コミ。ちーちゃんはやっぱり知らないよね・・・」

伊原はそう言うと少しバツの悪そうな顔をした。
千反田は持参したサンドイッチを口に運びながら小首を傾げる。

「夏コミ・・・それはどのような字を書くのですか?」
「えっと、季節の夏にカタカナでコミ。コミはコミケ・・・コミックマーケットってことなんだけど、聞いたことないかな?」

伊原がそう答えるも、千反田の頭に浮かんだ疑問符を消すことはできなかったようだ。

「コミックマーケット?それは漫画のお店ですか?それとも漫画の市場(しじょう)ですか?申し訳ないですが、知らないですね。それは有名なのですか?」

そう聞き返す千反田の言葉に、何故か伊原は更にバツの悪そうな顔をする。
「えっと・・・一部の人達にはとっても有名・・・だね、うん。」
一部で有名って、それは果たして有名といっていいものなのか?
別に聞き耳を立てているわけではないが、そう広くいない部屋に一緒にいると嫌でも会話が聞こえてくる。
なので自然と疑問も湧いてくるが、面倒なので口には出さないないことにする。

「はぁ、それで、その夏コミとは・・・」
「あぁ、ごめんね。あのね、夏コミっていうのは・・・あ、その前に。」
と、そこで伊原が俺へ言葉を向けた。

「ねぇ折木。あんたコミケってわかる?」
「いや、知らん。」
千反田ではないが、先ほど伊原が行った言葉をそのまま受け取るなら漫画の店かなんかのことかと思う。

「じゃあちょうどいいわ。折木、あんたにも聞いて欲しいの。」
こいつが俺に?なんというか、珍しいこともあったもんだ。
・・・だが、ここで頭の中で僅かなアラーム音が鳴るのを俺は感じた。
なんというか、面倒な予感が・・・

できるなら聞きたくないのだが、という俺の脳内結論を知るわけもなく、伊原は千反田の方へと向き直り、少し身を乗り出しながら説明をはじめた。

「あのね・・・」




―――同人誌即売会いうものがあるらしい。
漫画をはじめ、小説や音楽など、その種類は多岐にわたるが、一般的に二次創作の作品などを同好の士が売りに出す・・・
物凄くおおまかにいうと、そういうイベントだとか。

「でね、私の知り合いで、今度のコミケにサークルとして参加・・・あ、サークルってのは要はコミケでものを売る集まり、グループのことね。1つのサークルが1つのお店みたいなイメージと思ってもらっていいかな。」
あぁ、大学とかでも部活のことをサークル活動というみたいだし、それと同じか。

「それで、その友だちが参加するわけなんだけど、その、サークルの売り子が1人急に行けなくなっちゃって」
・・・・・・話が読めてきた。

「あの・・・それでさぁ・・・実はちーちゃんにお願いがあるんだけど・・・」
伊原の奴、急にもじもじし始めたではないか。いつもの威勢はどうしたというのか。

「はい?なんでしょう?」
いやいや、これまでの流れで気づけよ。
俺の心のツッコミを知ってか知らずか、千反田はにこやかなほほ笑みを伊原へと向けている。
一方の伊原は上目遣いで千反田に向かって「あー・・・」だの「うー・・・」だの言葉にならないうめき声を上げている。
「伊原さん?私でよければお伺いしますよ?」
千反田にそう促され、伊原の目に覚悟の光が見えた。勢い良く立ち上がり、両手を合わせ、深々と頭を下げながら、



「お願い!サークルの売り子手伝って!!」


 
伊原の声が特別棟に響いた。




第3話へ続く


 

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  1. 2012/06/24(日) 17:01:25|
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  4. | コメント:0
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