私が幼稚園に通っていた頃か小学生の低学年の頃か、とにかくまだ幼い頃のことである。
ある日、母親の友人の家に遊びに行った。
そこはマンションで、エレベーターが設置されていた。
太陽は既に沈み、空は暗くなっていたため、そろそろ帰ろうかという時。
マンションの入口で、親たちの別れの際の立ち話が長引き始め、退屈していた私はマンションの中をあちこちふらふらし始めた。
エレベーターの前を通った時、チン、と音がしてエレベーターの扉が開いた。
中に誰も人はおらず、未知なる空間の探検に勤しんでいた私はそのエレベーターに乗り込んだ。
そして入りこんだ途端、突然扉が閉まった。
何もボタンなど押していなかったのだが、そのままエレベータは上へと向かい始めた。
びっくりした私は、操作盤のボタンを押す。
アラビア数字は読めていたので、現在2階に差し掛かったエレベーターを止めようと3階や4階のボタンを押した。
しかし、エレベーターは止まらず、3階も、4階も通過していった。
そしてエレベーター内の回数表示が5階を示した時、エレベーターは止まり、扉が開いた。
外でエレベーターを待っている人はおらず、何故かその階は電気が点いておらず真っ暗だった。
慌ててエレベーターを降りると、それを見計らったかのように扉が閉まった。
しかしその後エレベーターは上にも下にも行かず、その場に留まっていた。
扉のガラスになったところから漏れ出る室内の明かり。
ふと、何かの影が動いたように見えた。
今、自分が降りたエレベーター内に誰かいる?
そう思った時、再びチン、と音がしてエレベーターの扉が開いた。
中には誰もいない。
煌々と照らされた無人のエレベーター。
怖くなった私は、エレベーターに乗らず、階段を駆け下りた。
1階に達した時、エントランスホールから走り去る私の背後で、エレベーターのチン、という音がしたが、
私は振り返ることができなかった。
外で立ち話をしていた母親に飛びつき、今自分が遭遇した出来事を説明した。
母親の反応はあまり覚えていない。
誰かが乗ろうとしてたんじゃないの?と、適当に流されて気がする。
この話はここでおしまいである。
この後、特に何があったわけでもない。
ちなみにこの時、自分が何処の、誰の家に行って、何をしてたのかは全く覚えていない。
このほんの数分の出来事だけが頭に残っている。
それから一度もそこに行った記憶はない。
スポンサーサイト
- 2015/11/08(日) 22:58:13|
- 雑文
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0